大伴旅人に贈られたセンダン(あふち)の歌

f:id:yahara:20190525162442j:plain今朝、伊都キャンパス内のセンダンの木を見に行ったら、はやくも花がピークを過ぎていました。先日、妻を亡くした大伴旅人に贈られた卯の花ホトトギスの歌を紹介しましたが、同じ時期に、山上憶良はセンダンの歌を傷心の旅人に贈りました。

妹が見し あふちの花は散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干なくに

「あふち」はセンダンの古い名です。当時、センダンは畿内の人にはなじみのない植物だったはずです。山上憶良大伴旅人とともに、太宰府に勤務してセンダンの花を知ったことでしょう。中央政府から弔問に来た石上堅魚が「卯の花ホトトギス」という定番のテーマで歌を詠んだのに対して、太宰府の歌仲間である山上憶良は、この土地ならではのセンダンの花を歌に詠んで、大伴旅人を慰めたのでしょう。山上憶良はなかなか気の利く人物だったようです。